夢のマイホーム。「どんなプランにしようか」、「外観のデザインはどうしよう」、「構造は?仕様は?」などなど考えることはたくさんあるかと思います。しかし、そのマイホームを建てる「地盤」の大切さについては意外と知られていません。いくら頑丈な建物を建てても、その建物を支える地盤が弱かったとすると非常にキケンが伴います。
地盤改良工事を行う必要がある軟弱地盤の宅地は、全国平均で約35%というデータがあります。ひょっとすると、あなたが建てようとしているマイホームのための土地にも、思わぬキケンがひそんでいるかもしれません!
安心な家づくりのためには、まず、その足もと(地盤)をしっかりチェックすることが大切です。地盤調査から改良までの一連の流れを確認しましょう。
まずは、その地盤の状況を把握するための調査を行います。
戸建住宅の地盤調査でもっとも一般的なのは、スウェーデン式サウンディング調査です。これは100kgのおもりを載せてらせん状の先端部を地中にねじ込み、その地盤の固さを測定するものです。
その地盤調査の結果から、現地の地盤・土質・地耐力などのデータから地盤改良工事の必要性を判断します。
調査の結果、この地盤はNG!という結果が出てしまった場合は、補強・改良工事を行うことになります。
後述しますが、どの工法で地盤改良工事を行うかという選択も非常に重要です。何も考えないで、地盤改良をしてしまうと後で大変なことに!
表層改良工法
軟弱地盤が2メートル以下の場合、表面の土にセメント(凝固剤)を混ぜて固める
柱状改良工法
軟弱地盤が2m以上5m以下程度の場合、土の中に穴を掘って柱状に凝固剤(セメントミルク=土とセメントの混合)を埋めてコンクリート状の柱を造る
銅管杭工法
6メートル以上にわたって軟弱地盤が続いている場合、鋼製の杭を打ち込む
地盤保証会社の基準に基づいて、地盤調査及び地盤改良工事を経て、現場検査に合格すると、保証が得られます。保証は10年間、5000万円まで(注:期間や金額は、保証会社や契約等により異なります)。
万一の時の事故の備えとなります。安心できるマイホーム建築へ。さあこれで安心!…というわけには、残念ながらいかないんです。
地盤改良における、3つのキケンについてチェックしてみましょう。
セメントを土と混ぜると、化学反応をおこし「六価クロム」という有害物質が発生するキケンがあります。「六価クロム」とは、昨今、世間を大きく騒がせた「アスベスト」と並ぶ、二大発ガン物質の1つで、LARC(国際がん研究機関)からもリストアップされています。
「エリンブロコビッチ」という映画をご覧になったことはありますでしょうか?
2000年にジュリア・ロバーツの主演で公開された映画です。
これは実際にあった事件をもとに映画化されたのですが、六価クロムがテーマとなっています。「六価クロム」による水質汚染の事実を隠蔽しようとしている企みに挑み、全米史上最高額の和解金3億3千3百万ドルを勝ち取った女性をモデルにした有名な映画です。
映画の中で、汚染水をはったプールで子供を遊ばせていた母親が真実を知り、血相をかえて子供を引き上げたワンシーンは衝撃的でした。
マイホームでは、庭で子供が遊んだり、家庭菜園を行ったりと様々な生活があります。セメント系の地盤改良を行った場合、この六価クロムが発生するリスクがあります。夢のマイホームで健康を害する可能性が少しでもあるのは嫌なものです。セメント系の地盤改良工事を行う場合は、ご担当の住宅会社の方に十分にご相談のうえ、ご検討されることをお薦めします。 (※セメント系の地盤改良を行った場合、必ず六価クロムが発生するということではありません。六価クロムの発生メカニズムは完全には解明されていないことが問題となっています。)
廃業したまま放置されたガソリンスタンド。そんな風景を地方のロードサイドで目にすることはありませんか?
ガソリンスタンドの跡地というのは、地下タンクによる土壌汚染があることが多く、その汚染除去の費用が高額になるため、土地を買ってもなかなか割に合わないことが多いからなのです。
2003年に明文化された土地評価に関する方針があります。
土地の鑑定時に「土壌汚染」や「埋設物」の有無をチェックし、もし発見された場合、その土壌汚染の浄化費用や埋設物の撤去費用を差し引いて不動産の価値が算定されるというものです。
セメントの塊は産業廃棄物とみなされてしまうので、セメント系の地盤改良を行った場合は、その不動産価値を下げてしまっていることになります。
「これからマイホームを建てよう!」と検討しているときに、将来、不動産を売るときのことを考えるのは水を差すような話ではありますが、マイホームを建てる土地は大切な財産です。価値を下げずに済むのであれば、その方法は十分に考えたいものです。
地盤改良を行っても地盤事故が発生しているケースが数多くあります。実際、地盤事故がどのくらい発生しているかというと、住宅の火災事故の発生が1000件に4~5件程度に対して、地盤事故は1000件に10件以上の発生率となっています。
ちなみに事故が起こった場合の損害額は、財団法人住宅保証機構のよりますと、平均して1事故あたり約566万円という統計結果が出ています。
このような事故が起きている要因ですが、事前調査による想定設計により支持地盤まで杭が届かずに施工されていたり、セメント系固化剤と腐植土との相性でセメントが十分に固まらなかったり、地下水脈によるセメントの流出などが指摘されています。
また、家を建てた後に、建物についての性能検査はほとんどの住宅会社にて行われていますが、その建物を支える地盤に関しての性能検査は一般の住宅地盤改良では行われていないのが現状です。
安心できるマイホームづくりのためには、きちんと地盤改良が行われているか、信頼できる情報開示が行われているかを確認することが大切です。